「ファイブスター物語はおとぎ話である。」ロボットの意志と言語について


  ニュータイプ12月号を読んだ時点から私がファイブスター物語について、心から湧いてくる疑問をこの一ヶ月間、紐解こうとし続けていたのですけども、なんだか結論が出ないまま1月号がもうじき出版されてしまいそうです(^_^;)
 とはいえこのクエスチョンはFSSの物語の根幹として座している部分でもあり、一ヶ月では解けないか…ひょっとしたら来月号で分かるかも知れないし(^_^;)いやその先もずっとこの謎について追わなくてはならないのかも知れませんから、せめてとっちらかった思考をまとめておこうと、新しい物語の出る直前に書いておくことにします。

 ※でもその前に先に余談。
 これを書くにあたって、ファイブスター物語13巻を改めて読み直したのですけども。
 ・エストがこうして無事にメンテナンスも終わってお話に出てきている(5年経過している)ことを考えると、同時期に負傷してエスト同様のカプセルに入れられているアララギ・ハイトさんがその後何らかの形で出てこなかったのはやっぱり変ですよね…。
 「あなたエストよりここに長くいなきゃいけないかもね」というのは単に負傷の具合ではなく、ミースの変なおせっかいによって生体改造行われてたりするんだろうか…。(ミース自体はその後も出てきているのにね)
 ・あとフィルモア帝国の皇子・皇女についての決定的な仕組みがわかり、それが「ボルガ・レーダー家の血を継ぐもの」となると、実際に皇子・皇女を護るというサクリファイスの身分に就くリリ・ニーゼル・フィルモア女王が実の息子に対して「私あなただけのサクリファイスなの」と言っているのを振り返ると、やはり現在ボルガ・レーダーの血を継承していると女王が認めているのは息子ジークだけで、実の娘でもあり、現在の皇女であるはずの茄里は違うとみるのが適当ではないかという気が一層してきました。(これは、回想シーンでバランシェが抱いている赤ん坊茄里と、ジークを斬った茄里が別人であるという意です。年齢とか合わなくね?とか、オデット→オディールの件でもその辺りは以前から書いてはいますけども…)

 
 さてまたしても余談ばかりになりそうですからここで本題に。
(尚今回、ロボットの名前がGTMだったりMHだったりバラバラになっていますが、これは掲載時の名前をあえて使うことにしました。読みにくい点があるかも知れませんがお許しください。)
 今月号でGTMデモール自身の嘆きが戦闘中に露呈したことについて、あるいはニュータイプ8月号の表紙(クラック氏設定画が掲載されているものです)でツァラトウストラ・アプターブリンガーの騎体数字について、「ZAPは自分の意志をもって稼働するGTMである」とさも特別なことのように書かれ、なのにリストには「ZAP以外のGTMも数種掲載され、同列視されている」事がなんだか私の中でこんがらがっているのです。
 というのも…

 今回のデモールがそうであるように「ファイブスター物語に出てくるロボットって、どれも意志があるのではないか?」というのが私の今まで接してきたお話への印象なのですけども、実際の所物語に登場しているキャラクターは(ファティマやごく一部の人間を除き)ほとんどの人物がその点を理解していないのか??となったのです。

 ファティマは今までも、ロボットと何らかのコミュニケーションを取っており、例えロボット側にはその時々いつでも(読者に示されるような)セリフが実際に見られなくても、AFは彼らの気持ちを頭脳で感じ取っているような描写は幾つも見られています。
 多分ファティマ・アウクソーはそこが壊れた…AFガーランド達が13巻で「GTM感応機能」と呼んでいる部分だと思います(実際アウクソーはシュペルターに別れを言おうとしてお話できなくなってしまったと言ってますし)
 ファティマにとって必須の性能でもあるということは、AFガーランドはその事をも念頭に置いてこの生体兵器を開発しているはずです。

 でもロボット本体を作る側にとっては「感情を所有していると思われるロボットとインターフェイスが相互コミュニケーションを取ること」というのは制作にあたって予想外のことなのか?…としか書きようがなく困惑しています。しかし今月号のマウザーやヒュードラー博士の反応を見る限りでは彼らはその点把握しているような感じを持てないのです。
 つまりファティマと、AF開発者と、ごく一部の人間以外は「FSSに出てくるMHやGTMは感情を所有している」ことを分かっていはいないのではないか?という疑問です
 第一本当に把握しているのであれば、GTMデモールを開発させる際もっとその辺りをチェックしてから実戦に出すのではないかと思うし、第一兵器の開発自体がもっと違った形に…実際にやり取りの出来るファティマたちに、それこそ設計時点から彼女たちに多くを委ねられるような気がするのです。

 しかし、「機械で出来ているこれらのロボット兵器には実はすべて感情がある」という前提は、もしもこの作品がSFだったら全くもって理屈が通用しないお話にもなりますよね…。(私はそう思っていないから違和感を感じていないけれども、やっぱり「ファイブスター物語はおとぎ話である」ということになるのですね。)
 「破壊兵器をコントールするための制御部分」として生体頭脳でもあるファティマやエトラムル、あるいはガス演算体シン・ファイアが務めているのであり、本来は兵器本体にはメカしか存在しないはずなのですけども…

 でも9巻の、死刑直前のクリスティン・Vを最終的に庇う仕草をみせたのはネイキッド状態のネプチューンでした。しかも幼いクリス以外は機械が勝手に動き出す事態を驚いていないのですよね…(しかもレーダー8はあれを機械の意志であると完全に把握していますよね。)
 またファティマのいなかった時代、映画「花の詩女ゴティックメード」でも、カイゼリンがトリハロンたちにあるものを示したシーンは明らかに”ロボットの意志を感じさせるもの”でしたけども、バルバロッサ大王の態度は「なんか訴えてますよ」的で特別な様子はなかったですから、大昔からジョーカー太陽星団を支配してきたフィルモア帝国の人たちはなんとなくそういった不可思議を理解しているのでしょうか?
 一方8巻のテロル・ミラージュのウインク?を受けたブラフォードは驚いていましたし勝手に発信された?アイシャはえらく不気味がっていましたよね…。

 こういった状況なのでキャラクターによってまちまちな「兵器が示してくる感情」への受け止め方ですけども…先にも書きましたけども、そういったことはどこから起こりうるのかは物語の中でも謎中の謎になりそうですから先送りするとして(^_^;)ただ、ロボットにはそういったことがあると知っていると知らないとでは、兵器の開発思想も、手段もその結果も異なってきそうな気がしてならないのです。
 12月号で描かれている、GTMが発した恐怖がダダ漏れになっている描写は、単にエトラムルは機械の感情をありのままに伝えてしまっている…人間の顔に相当する器官を得た新型エトラムルと、マヨール・レーベンハイトの持つバランシェ作エトラムル”ロンド・ヘアライン”が持っている機能から由来しているものであり、声として再生されてしまっているだけのように思います。あれも情報の一つには違いないからです。
 AFは自らとロボットとのやりとりだけで完結させているから周囲に漏らす必要は殆ど無いと思われます。(かつてパルスエットがMHプルートが怖がっているからと退却させてましたけど、マスターのミハエル・レスターには聴こえてなくても本当にプルートのの訴えを聞いて彼女は処置したのかも知れませんね)
 そして新型エトラムルもロボットが発する恐怖をなんとかなだめようとする行動を見せていたことを鑑みるに、本来のエトラムルもまた(人間に相当する声という要素がない分)言語化していなかっただけで、AF同様のアクションをロボットに対して普段から起こしていた可能性は高くなります。(その点、あくまで演算体であるシン・ファイアがどうだったかは不明です。ビリジアン博士はシン・ファイアとエトラムルとを同一視しているようですけども…)

 私はあの描写そのものはネタバレ感想のときに抱いた印象から変わっておらず、新型エトラムルが起こした不具合の一部として描写しながら「ロボットに誰でも分かる音声を与えて、機械(GTM)にさえ感嘆をさせてしまうリッター・ジェット、”破烈の人形”の凄さ」という表現をさせているのではないかという疑惑を抱いており(^_^;)多分この問題自体はは後日すぐに解決するのではないかと思われます(音声化させなければ良いのですから)

 ただデモールについてはそれで解決するかも知れないけども、それとは違う種類の疑問も私はもうひとつ抱いています。今まで書いてきたことについてもこんがらがったままですけども(^_^;)そちらについても触れていきます。
 今回のGTMデモールはテスト参戦ですからあくまで初陣だと思います。
 そして今までに、ロボットが持っている感情を、言語として発しているのを私達読者が知っているところを思い返すとしたら…
 まずMHヤクト・ミラージュとAFパルテノとのやりとりでしょう。彼女は破天荒なやり方ではありますけども(^_^;)とはいえ優しく声をかけて、データをやり取りし、あの巨大な兵器のコントロールを完璧に支え制御することに成功しています。
 そんなヤクト・ミラージュと今回のデモールは初陣だったからなのか、ロボットが発する言語の内容は、怖いとか綺麗とか、言葉を覚えたての子供のような印象を覚えます。(一体どんな声質をしているのかはわからないですし、ヤクト・ミラージュの声はパルテノの他には伝わらなかったと思うけども)
 しかしもうひとつ、私達はロボットが発する言葉を物語で目撃しています。それは「ファティマ・クローソーが聞いたジュノーンの訴え」です。
 ただクローソーはロボットの声が途中まで、もう世にいないコーラス3の発言であると完全に誤解しています。となるとその内容も声そのものも大人のものであるということになります。(訴えている内容も具体的でしたしね)
 え、おかしくないですか?ジュノーンだって二度目の出撃に過ぎないのですけども…。
 機械だから急に成長するの?それとも何か他に理由が?

 このヤクト・ミラージュとジュノーンとの違いは一体どこから生じているのか?私個人は今までもなんとなく曖昧にしてしまったのですけども、今回のデモールが発している言葉の内容もヤクト・ミラージュと同質の幼い子供のようであること、作り手であるはずのマウザーやヒュードラーがこの機械の声に大いに理解を示しているわけではなさそうであることから、とある事がふと頭をよぎりました。
「ひょっとして、騎士としてでなくガーランドとしての才も何故か代々受け継がれているコーラス王家の王は、機械の意志を把握しているだけでなく、AF同様に、機械の声が聞こえているのか?」
 …なんじゃそりゃ?まるでドリトル先生じゃないかと私も一瞬苦笑いしたのも確かなのですが…しかし以前にも書きましたけど、ジュノーンの造り手であるコーラス3は、剣にも鳥にもジュノーンにも度々自ら話しかけている「なんかファニーなひと」であるため、ジュノーンは彼の独り言を、作られながら聞き取っていたのかな?という感じは以前から持っていたのだけども、もしもそれが単なるひとり語りでなく、実際のやり取りとして(AFとロボットの会話のように)成立していたのであれば、「ぼくが30年かけてここまで作ったんだ。悪いはずがないよ。ね、ジュノーン」と言っているのもコミュニケーションのひとつになり、そういったやり取りが機械と製作者との間でずっと成されたことになります。
 当然ウリクルも(AFの機能のひとつとして)ジュノーンに話しかけていますから、その歳月の積み重ねが人が成長するように機械も大人びてしまったのか?ひょっとしてソープに完成度が高いことを感嘆させたのは、そういった相互フィードバックによる果実なのか??
 うーん…分かりませんけども(^_^;)ただ、本当に兵器に感情があるのだとすれば、その訴えに耳を貸せる人間、ましてや直接手が入れられる開発者がいるのは物凄いアドバンテージになるのは間違いないのです。でもそのあたりは(AFガーランドを除いて)軽視されているのか、レーダー8みたいにごく一部の人物しか知られていない、ということになっているのでしょうか。
 そういう意味ではGTM、AFガーランド、騎士と兵器に必要なすべての才能を持ち合わせているダイヤモンド・ニュートラルがどういった兵器の開発をしているのかは今後気になるところです。
 また私の思ったへっぽこな思いつきがもしもその通りであるならば、「母にGTM搭乗して戦うことを禁じられた」息子コーラス4にも機械の意志が見えたり聞こえたりする場面もこの先にあるかも知れませんね…それで騎士として生きることのない彼がどんな判断をするのか、それでどんな人生となるのかまでは私には分かりませんけども…。

 おっと、なんか話が脇道に流れてしまいました。今回は本当にえらく長くなりましたけども、それでも最後に。
 ニュータイプ8月号のZAPの機体数字の説明はひょっとすると、「これらの機械には意志が存在するよと、AKDがその集団内で(FSSにおける、SFでは説明できない不可解な現象をきちんと)理解して扱っているリスト」でもあるのかな、と、これを書いていてそんな気もしてきました。だからZAP以外の…カイゼリンや破烈の人形と言ったGTMもこの中に含まれているのかな、と。
 ただそれにしてはマグナパレスやイェンタイ、リョクホウが含まれてませんけども…機械も気難しくて特定の人にしか気持ちを示さないのかな(^_^;)
 まだまだへっぽこの謎が広がるばかりです…。

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