2 見えないチカラが、あなたを導く。
前章の最後にいきなりファティマの話からモナーク・セイクレッドについて触れたけれども、勿論このことについては単なる私の勝手なへっぽこ予想・・・それもあまり具体性に欠くものに過ぎないし、今回の予想に関係しているかというと・・・あんまりしていないような気もする。それでもある理由から回り道をしなくてはならないため、少しお付き合い頂きたいと思う。
モナークについて現在、一応確実そうで分かっているだけの事を書けば
・モナーク・セイクレッド、その真実を知っているのはログナーである。
・モナークからの情報を吸収したAFタイ・フォン、辿り着いたナインはどちらも人工生命体である。
・モナークははるか昔から人類の何かを記録し続けている。それは予めジョーカー太陽星団で誕生した生命のDNAに打ち込まれている。
・はるか昔昔から続けられてきた謎の営みは、4100年に沈黙する。
・それでも人類は生き続けるし、一部はアマテラスにより星団外へと脱出する。人類から託されたカイゼリンとタワーも連れて。
そこからぼんやりと考えられたのは「実はモナーク・セイクレッドによって人間側のデータは固定され、その予定調和によって生かされている」のではないかということ・・・
しかし、人間でないものがその時々で手を貸し、少しずつ少しずつモナークを狂わせ、最終的に4100年・・・コーラス6と人工生命体であるユーパンドラが対峙し、女神アトロポスが終焉の言葉を述べてセントリーがデルタ=ベルン星を破壊した事が決定打となって、人類はモナークからの予定調和から解かれるのではないかという気がしている。
ただ最終的にはそうなったとしても、そこから生じた「モナークの予定とは違った」人間の営みがそれこそ何千年もかけて変化し、そこから生じた一つのドラマはまた一つの違うドラマに引き継がれ、いくつもの世代を超えて何か大きなうねりとなりつつも、そこに至るまでには相当数の出会いと別れのドラマが繰り広げられるのではないか、そんな事を考えてしまう。
例えば3000年前の物語、ゴティックメードのトリハロン皇子だってそうだ。
というのも彼は詩女ベリンとの出会いが彼に勇気と大きな伸びしろをもたらし、映画の後に、歩んだであろうその一つ一つのやりとりは地味だろうけども(彼が行ったことは外交政治という、戦を伴わないものばかりだからだ。)しかしとてつもなく大きな困難に立ち向かっていった彼の尽力で、統合フィルモア帝国は誕生し彼は初代皇帝になっている。
その、大きな道へと導いていったベリン。実は彼女だってその名前から・・・
ってここで書くべきことではないかもしれないのだけど・・・
とにかくファイブスター物語には「人間ではないもの」が大勢登場している。
神様アマテラスに運命の3女神、炎の女皇帝ナイン、5つのセントリー、カレン・・・もっといますよね。(ログナーだけイマイチ分からないのですが、モナークの正体を知り随分遥か昔から繰り返し生きていそうだから人間にカテゴライズするのは少々無理があるような気がしている)
一見彼らだけで何とか出来そうな勢いとチカラも持っていそうだけども、どうしてか、モナーク・セイクレッドはあんなに強大な能力を持ったナインですら壊せないのだ。その空間を知り尽くしたタイ・フォンが地獄と称したその空間、そこは時間が止まっているのにも関わらず彼女は終わりある世を望んだ「作り上げられた世界」。
その強固さは、一体何であり、何のために存在するのだろうか・・・
FSSを読んでいるとついつい、ぼんやり思うけども、モナークについての謎はそのうち、いつの日か漫画で明らかになるだろうし余談過ぎるからここまでにしておきたい^^;
ただ、人類とは違った存在の彼らは世界を俯瞰できるだけの能力を持つものの、モナーク側に属している人間に協力して何かをしていこう、という立場ではないし、その余りある力はとてもではないが世界に対して影響力が大きすぎる。
彼らが直接対峙すべき対象は、サタンに代表される異世界の脅威などジョーカー世界の外にあるように思われる。
逆に言えば彼らが直にモナークに手を下そうとせずとも、「偶然でも例え気まぐれでも、彼らが人間に対しした何か」については恐らく相当の影響力を内側からモナークに与えるのではないか?
そんな事を考えながら物語を読んでいくと・・・遺伝的にはナインの孫、になるというファティマ・ファティスはあの優秀さで、人間である騎士の傍で日々仕えながらも、その影響力をヒトにもたらさないのはある意味当然なのかもしれない。
人類が彼女たちの発揮できる力をがんじがらめに縛っていることには間違いない。しかも先にも書いたように、彼女たちが限られた機会を生きるには人間が敷き詰めたレールの上に従いただ歩くのが一番無難なのだ。そしてその人類はモナーク・セイクレッドというまた違う仕組みのレールを生き、去っていく。
・・・でもそうでない物語が、ファイブスター物語には今までもいくつもいくつも有りますよね?間違いなく・・・
例えばファティマ・静はドラゴン(恐らくセントリー・ブリッツ)に促されて主人ミューズ・レイバックに自国の戒律を説くのをやめ、破烈の人形を引っ張りだしアイシャ達を助け、茜の大地・カステポーで散った命に報いた”トラフィックス1”。
これで静はあの美しいドラゴン・ドロップをもらっただけではない。ミューズが思わぬ賞賛を方々から受け、彼自身もまた成長していることだって恐らく「一つの小さな流れ」だと思うのだ。
今後ミューズがどう動き、ある意味「無敵状態になれるお守り」を貰った静はこの宝石を何処で使うのか・・・私個人としての予想はこの宝石、とある理由からジョーカー太陽星団では使わないのではという気がしているけれども、間接的にセントリーに導かれ、逸脱した彼らの動きは今後も注目していかなければならないだろうと思う。
※宝石の行く末に関しては近いうちに連載で読めるのでは?という気もしているけど…どうかな?
いや、ミューズについては、その後も修行を続けることとなった彼は、既にこの地で一人の少年と出会っている。ヨーン・バインツェルだ。
ヨーンは不遇な少年時代をファティマ・バーシャと過ごしている。
その僅か一年余りの時間、彼女との出会いと別れはヨーンに「彼はファティマの魔性に捕まっている」と人々に侮蔑や人物を惜しむ視線をもたらしている。
だが考えて欲しい。
ヨーンは騎士の才能は持っていたけれども「それ以外何も持ち合わせていないただの少年」でしかなかったのだ。素直だけども世間も知らない、それこそ孤独な少年であり即道を踏み外しかねないとても危険な状態であったにも関わらず、バーシャとの旅路は彼に、それも短期間で「正統に鍛え上げられた騎士の所作」を彼に叩きこませ、「騎士とはなにか、あるべき道」を教えていったのだ。それもバーシャが途中でどんな目にあっても彼女は忍耐強く。
彼にいくら才能があったとしても、ただ生きているだけではそんな出会いは、決してもたらされないものなのだ。そんな二人の変わった放浪と経験は、ヨーンにどんな大きな成長を促し、また多くの出会いをもたらしていることか!
そして「騎士ならばどうすべきか、自分はどう生きるべきか頭では分かっていながら、失ったバーシャへの思いが抜けずどうしていいのかわからない」彼は、バーシャのためと泥棒を働いたのにも関わらず、その後も何故か色々世話を焼いてくれてるガーランド・桜子を頼って勉学のため学校へ入学する。
ここで知り合うのがちゃあことワスチャ・コーダンテとノルガン・ジークボゥなのだ・・・
・・・とヨーンにまつわる出会いの話はいくつも連鎖していくけれども、長くなりすぎるからここで一旦切ることにする。
ひとつここで言えるのは、バーシャの場合は「ファティマとして壊れている」といった背景があるものの、ファティマ本人さえその気ならば、相当根気よく、人間に付き合い素早く個人が持つ欠点を見抜き、丁寧に教え、短期間でもその人を成長させることが出来るのだ。
いくら才能があったとしてもそんな優秀な先生に巡りあう機会は、彼のようなあてもない平民出身ならば特に少ない。
それはバーシャが「エストが記憶している特殊な才能をヨーンに見せた」だけではない。
バーシャが壊れて騎士に仕えられないためヨーンは彼女を保護出来ず、「人間にはただ服従するだけ」のファティマである決まりの枠ごと故に修行中どんな仕打ちにあっても、彼女はヨーンに指導し続けていた。
どうしてバーシャはそのようなことをしたのか?それはただひとつ。
「ずっとあなたのバーシャでいたかった。」
ヨーンに対する強い思いがバーシャにファティマであることを逸脱させ、単に人間に仕え言うことを聞くだけの存在ではなく、時にはヨーンを叱咤激励しつつファティマの優秀さと根気強さで短時間で一人の人間を鍛え上げ、成長させたのだ。
だけども、ヨーンを大切にし人工生命体が持つ能力の全てを用いて彼を育てあげたバーシャはもう帰ってこない。彼はそれが相当特殊な状況であったと気が付き、他のファティマは決してそうではないことに気がつく日は来るのだろうか。
普通の騎士とファティマの組み合わせでは得られない悩みである。矛盾を抱えた彼には、大いなる回り道だろう。
しかしそれでも彼には、もう既に沢山の大人物との出会いがバーシャとの邂逅によってもたらされている。そして皆心配してくれている。
だからきっと、大丈夫だろう。ヨーン君ならば。
立派なミラージュ騎士になった上で、きっとモナークにも影響を与える大きな働きをもたらしてくれるのではないだろうか。
そしてどんなドラマがこれからヨーン・バインツェルに待っているのかはわからないけれども、バーシャに導かれ一流の騎士の腕を確立した彼が、眼前の悩みを乗り越え一人前の立派な大人の騎士になった更にその先には、黒い兵器の一部として扱ってくれることを望む、一人の女性との再会が待っているのではないかと思っている。
なんだかまたおかしなことを最後に書いている?まぁそれはいいか・・・
ヨーンは大いなる悩みを抱えているけれども、それこそ「宝石のような出逢い」があったのだ。人生の選択の末、例え発端は偶然でも拾い上げた道の素晴らしさに彼自ら気がついて欲しいな、と願っている。
そして私達はバーシャには直接出会えないだろうけども、そういった「人生における素晴らしいめぐり逢い」は、作品に触れているあなたにも拾い上げるチャンスはきっとあるはず、と何処かで永野先生に問いかけられているように、漫画や副読本の文章を読んでいて時折思う。それは恋愛とか結婚とかそういう話ばかりでなく、様々な形であなたの人生の支えとなるような。
※ただチャンスはそこら辺にあったとしても、拾うのも見落とすのも、ポイっと投げ捨ててしまうのもそれは自身の生き方次第ですけども…
こういった視点で語るともう一人、「とんでもない逸脱をして人間を導いているただのファティマ」がいるような気がしている。
そちらについてはまた次章…(って本当に長いな、お許し下さい。)
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