展示室50・安易な「予定調和」ならば未完のほうがマシだ!

  ファイブスター物語に関係あるようなないような話題をへっぽこ画とともにお送りする1コーナー「展示室」。半年振りのお題はやはり「9割位はFSSとは関係のない」話です😅
 それでも構わない方は良かったらどうぞ。(本当はFSSネタで書きたいことがあり、コラムにする予定で本来そちらを先に準備していたのですけども、スミマセン後回しになりそうです…。)

 今回読む方によってはあまりに物騒と捉えられそうなタイトルがついているのですけども、お許しください。
 ファイブスター物語の連載が始まって37年が経ち、近年の永野先生の連載勤続ぶりは物凄いものを感じますけども、といっても先生や私含め皆さん、今このときも容赦なく歳を取っていきます。
 「果たして私達はFSS巻末の年表の大方の物語を全て目撃することが出来るのか?」というお題をここで出すとしたらたちまちファンの間で大議論となってしまうでしょう。
 今のお話ペースでは魔導大戦は終結へと動いていることは理解できますけども、永野先生ご自身で手掛けられるFSSでは、その進度では膨大な世界を描写するのにきっと限界がある、ということもなんとなく予想出来てしまう所まで時計が進んでしまっているこの頃ではあるのです…。
 なのですけども…。

 ここからファイブスター物語とは全く関係のない話に突入します。
 最近私が読んでいた数少ない漫画作品のひとつが終了しました。
 古代ローマ帝国の時代に「博物誌」という百科全書を書き遺したプリニウス(23~79年)の生涯と、その間に繰り広げられた古代ローマ帝国での政治闘争などが織り込まれた、「リアルな伝記のようにも思える冒険ファンタジー」。そんな趣の作品といったところでしょうか。

 迫力のある描写と、色々想像を掻き立てられる歴史と妄想が入り交じる広大な世界、実在人物とオリジナルキャラクターとで繰り広げられる厚みのあるドラマは、1巻を手にしたときからとても惹き込まれ、コミックスが出版されるのを今か今かと心待ちにしていた作品でした。
 ところが11巻が出版されたのち、2年ほど音沙汰がなく一体どうしたのだろう?と思ったのですけどもこの度最終巻である12巻が出版されました。
 正直な所単行本を手にした時点で、ぼんやりとしたクエスチョンマークが点灯していたのですけども…。
「なんじゃこりゃあああああああ」と読み終わってから頭を抱え、疑問符を確認するためにもう一度10巻、11巻を読み直し、再度1巻から読み直し…。
 こういう動作を繰り返してから私が次にしたのは「本棚からこの単行本を全て退去させる」ことでした。
 白黒の漫画画面でも心の目では極彩色に思えたような、私を魅了し面白かったはずの物語が、この最終巻によってすっかり色褪せてしまったのです…。

 「プリニウス」は1巻冒頭、79年、ポンペイのヴェスヴィオ火山が噴火し、これを近郊で見ている年老いたプリニウスと幸薄そうな中年の記述士エウクレス(エウクレスはオリジナルキャラだと思います)の描写からお話が始まります。
 そして次に時は遡り、このエウクレスがまだ青年だった頃のプリニウスとの出会い(61~2年位?)が描かれて物語が改めてスタートするため、読者は「ああこのポンペイのところがこの物語の最終盤、もしくはクライマックスなんだな。」というのが歴史をよく知らない私のような者にも未来予告のように伝わってくるわけです。

 このヴェスヴィオ火山の噴火シーンとその時のポンペイの街の様子は最終巻になって大変悲壮感ある描写で再登場し、約束されたかのように1巻冒頭を思わせるデジャヴュな場面も登場するのですけども…。
 ところが…。12巻ではそれまで綿密丹念に紡いでいたはずのドラマが突然6年位?とんでいて、更に巻内で5年位進み、計十数年も急激に時間が経過し、予め予定されていたクライマックスだけが描かれて、あっけなく物語が終幕してしまったのです。
 それもただ早回しにしただけでなく、実在人物も含めてそれまでものすごく多くのキャラクター間で繰り広げられていたはずのドラマや伏線をばっさりとカットしてしまった状態で…。
 
 勿論この物語の作者は大ベテランかつ、とても有名な方ですから、上記の様なおかしな状況でも一見物語には破綻のないように様々な処置を施しているのです。1巻で予告されていたヴェスヴィオ火山の噴火についても、その後この天変地異がどうなったのか?といった事態も最終巻できちんと描かれています。
 しかしそのあまりに早急な飛ばしのせいか、オリジナルキャラクターの締め括りはほぼ全員ハッピーエンドに近い状態に。そのせいで物語から多くのものを置き去りにしており、例えば…エウクレスと、唖の娼婦で後々ローマ皇帝ネロの愛人となってしまうプラウティナとの道ならぬ恋とか…9巻で家族のもとに帰っていった謎多き子供タニティアとか…(先にこの描写があるためラストシーンにものすごく違和感を感じます。)実在人物でもネロの部下で物語中ずっと大いなる陰謀に関わっていたティゲリヌスの顛末とか‼︎
 他にも本当、多々あるのですけども、とにかくとても続きを楽しみにしていた幾つものキャラクターの未来や、物語の伏線やドラマを、突然放棄し完全にすっ飛ばしており、放ったらかしも良いところじゃないか!!と嘆かざるを得ないのです。

 ただタイトルにもなっている主人公、プリニウスの物語は一応形だけはちゃんと終了していることもあり、物語が完結していることで満足されている方も少なからずいらっしゃる。気になって人の感想を読めば「未完の作品」よりも「何はともあれとりあえず幕を閉じた」もののほうが評価が高いのかなと、楽しみにしていた物語に置いてきぼりにされたような気分とも相まって悲しくなるばかりでした…。
 
 と、ここまでFSSと関係ない別作品(このブログはファイブスター物語についての内容で構成されていますから)について延々と書いてしまって大変すみません。
 でもひょっとしたら、ひょっとしたら「明日は我が身」と、おひとりだけでもちょっとでも、FSS読者さんが何かを連想してくれたのならとてもありがたいです。
 プリニウス1巻での未来予告はそのまま「FSS1巻の3960年のLEDミラージュとバッシュ・ザ・ブラックナイト」の対決に当てはめることも可能だからです。
 歴史もの同様に単行本巻末の年表で物語が動いているFSSですけども、もしも3070年の今からドラマや設定等を飛ばしまくって単行本1冊で3960年に辿り着いてしまって完結したらとてもお嫌でしょう?(勿論あり得ないと思いますが…)
 今回私が経験したひとつの結末はそんな感じなのです。
 ひょっとするとこの「プリニウス」については、あまりに展開が急すぎるため打ち切り、もしくは違う大人の事情によって物語が大幅短縮されたのか?という疑念が残り、その可能性も否定できないのですけども、もしあったとしてもそれがどのようなものなのか、ただの読者である私には知りようもないこと。作品から受ける印象がほぼ全てだったりするのです。

 そして永野先生が今後ファイブスター物語をどう完結に持っていくのか、それもまた私には分かりませんけども…とにかく永野先生が考えうる表現手段を貫いて頂けたらと願うばかりです。(先生のプランニングによっては将来、別作者やプロダクションで繋いでいく方法もあり得るでしょう。でもどんなパターンであっても先生のご意思でね!それが全てだと思います。)
 早急に物語を完結させることばかりに力点を置きすぎて、「終わり良ければ全て良し」みたいな幕引きを図るのならば、未完のほうが私にはよっぽどマシです!
 とはいえ持ち時間は限られているのもまた確かなことです。
 私としてはとにかく永野先生のご健康と、表現したいというお気持ちが一日一秒でも長く続かれる事を心から願っております…。

 そんな感じで半年ぶりの展示室でした。
 展示室ということでへっぽこ画も一応。この元トップ画2枚は実は背景が「写真」だったりします。家の近所を最近よくウォーキングするのですけども、ここにあの方たちがいたらいいな、という願望が割とそのままストレートに出てしまいました💨
 1枚目は武蔵関公園、2枚目は碧山森緑地保全地域という、このあたりに良くある小規模の保全林。どちらも私のお気に入り場所です。

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