黒い瞳の傍観者。

 
 …えー今回は本題に入る前にお知らせが二つあります。
1 以前このブログでもお知らせしております「なぜだか当方もほーんの少しだけ関わっている」演奏会、11月11日(日)14時~代々木八幡・HAKUJU HALLで行われる「鈴木秀美のガット・サロンVol12.シューマンの室内楽<弦の音色・木の響き>」について、本日からチケット発売になっております。(リンクはチケットぴあの頁になっています。)
前回のメンデルスゾーン、また7月のヤマハホールでのシューベルティアーデ(チケット完売しています)同様の、シューマンが作曲していた時代の音楽を、そのときの楽器を用いてクラシック界の綺羅星の皆様が揃って素晴らしいシューマンの私的で詩的な世界を繰り広げてくださります。良かったら是非ともぜひとも、日曜日の午後をお楽しみいただけたら幸いですm(_ _)m
※画像は今回の公演についてのチラシになります。クラシックコンサートに行かれる方はひょっとしてどこかでお見かけするかも?




2 こちらは更に個人的な内容になりますけども、この度ファイブスター物語に関する、私が手がけた二次創作ノベルについて、縦書きPDFに対応した改訂をすすめ完成・公開しました。(2012年・ゴティックメード公開前のものが多いです)
 これから一ヶ月間、6月30日まで、PDFとpixivでの期間限定公開となります。その後はジ・エンドレスの如く封印する予定です。
 もしもご興味ありましたらリンク先「二次創作系について・最終版」からお好きな方で閲覧いただけたらと思います(二次創作の際にモデルにしたBGMに関するAmazonPrimeMusicのプレイリストもあります。プライム会員でしたら追加料金無しでお楽しみいただけます。)

 …すみません宣伝ばかりで^^;
 さて予告から散々延びていたこのお題・やっとこさっとこ本題に移りましょうか。

 タイトル「黒い瞳の傍観者。」からもうっすらお分かりになるかもしれませんね。
 ニュータイプ6月号・トラフィックス3パルスエット編の最後を飾ったのは、意外なことに皇帝ダイ・グ・フィルモア5のファティマ・チャンダナ。
 彼女の「らしからぬ表情」から取らせていただきました。

 帯に「その先にいるのは……」と書かれていることもあり、皇帝の後ろ姿を見送りつつ、そんな部屋の向こうにもチャンダナが厳しい表情をする原因があるのも、それ自体は間違ってはいないと思うのです。でもそれが全てではないように思いました。
 彼女はファティマなのです。それもかつてのフィルモア皇帝の妃であった剣聖慧茄のファティマも務めたことのある、超優秀なバランシェ・ファティマ。
 普段は言葉を発するのかも良くわからないほど、ぼーっとしているようにしか見えない彼女ですけども、それでもしっかり「見続けている」のだな、というのをまざまざと感じるFSSの名シーンだなぁと読んでいてい私は思いました。
 そしてやっぱりチャンダナも、間違いなくファティマなのだと。(大事なことなので二度繰り返し^^;)

「チャンダナは、自分の主人が僅かだけどもおかしな兆候を示している。それを見て自身の頭ではその症状が一体何を示しているのか、そしてそんなダメージを背負った、残り時間の少なさそうな彼をフィルモア帝国全体が支えてくれるわけもなく、やがて起こりうる彼の転落、あるいはコールタールの泥にやられるかハイエナにたかられる系のドラマが待ち構えていて、そんな失望の行く末に彼が不治の病もあり、この世を去ってしまうかもしれない。そんなことをファティマの頭で瞬時に予測している」
「しかもそれは多分かなり的確だ。だけれども、そんな予測できる未来に対して彼女は、自分の主人でもある皇帝に対して自ら寄り添うことも、あるいは少しでも良くなってほしいという、アドバイスひとつすらもできず、全ては彼の運命として、無力な立場でそれらを受け入れるしかないからあんな悲痛を伴う睨みつける表情を、ダイ・グにすら見せずに読者に対して浮かべるのだ」

 …私はフィルモア帝国に関して詳しくありませんから^^;書けるとしてもせいぜいこのくらいですけども、きっとチャンダナはもっともっと、その頭でフィルモアの情勢や自分の主人と周囲とを大変広い範囲で細かく把握し、即座に具体的に分析している。
 チャンダナは…彼の祖母の代からフィルモア帝国に起こっているドラマ、その光と影の多くを背後からじっと、長い時間お仕えしながら見つめ続けているのです。
 例えあんなにボウっとしていたとしても……^^;

 勿論その前の展開から、ダイ・グの病が不治の病であることには間違いがなさそうですから、その事自体がまず悲劇なのですが、今のところはご本人含め、まだ殆どの人間が知りません。
 しかし大変重い課題を突きつけられている皇帝の治世の、「今の所はちょっとしたつまづき」。しかも現在、そうでなくても段々と危うい立場に置かれつつあるダイ・グなのに、更に病という一大ファクターが加わったら……。
 チャンダナはいろいろな人物や状況について見てきたものなどを更に情報として取り入れ、膨大なデータを脳内で一瞬でかき集め試算をして、その予測から導き出される彼の暗い未来を、このときチャンダナは……彼女は私なんかよりももっともっと明解に、具体的に何かを予見してしまったのではないかと考えています。
 
 それは「悪の皇帝」ならまだいいんです。的なところでしょうか。
 私は12巻のダイ・グの台詞に、以前から疑問を呈しております。そりゃ歴史に汚名や悪名を残すのも大変辛いところではあるのですが(3巻のブロード・ケンタウリの台詞などもそんな一端ではありますよね)悪名は悪名なりに大変目立つのです。
 そうではなくて…かつてのローマ帝国の歴史でも何度かあったように、皇帝として扱われずに抹消される、歴史に名を残せない、存在自体が闇に消されて打ち捨てられてしまう可能性とかも今後は考えられるのではないでしょうか。
 ましてや超大国フィルモア帝国の長であるならば。そんなことになってしまったら悪で名を残すよりもとても辛いことのように考えられるのです……。

 歴史に名を残したいというのはレーダー8が言っているとおりでもあるのだと思います。
私達は余程のことがない限り…それが善行であっても大犯罪であっても、そういったことを起こさない限り、つつがなく人生を過ごして生涯を終え、やがて忘れられる存在です。それは殆どの人間はそうなのでしょうけども、常に沢山の国民に見つめられて、国の舵取りを任され、あまりに重たい荷物を背負っている人間ならではの考えとしてレーダー8の話も頷けるものはあります。(だからといって、伝説的な存在になってしまうのと引き換えに、若くして戦死してしまうのもどうなの?というのもご意見としては間違いなくあると思いますけども…おっとこれは余談ですね。)
 FSS読者はそれが具体的に何であるか今現在はわからないし、あくまで予測ですから悲劇まっしぐら、になるのかは今後のドラマ次第ですけども、それでもチャンダナの表情は的確に彼の未来を予感させています。
 
 そして彼女はやっぱりファティマなのですよね。どんな内容であれ(今回は悪いパターンと思われますけども、よかれ的な事だとしても)マスターの人生に対し予測が出来たとしても彼に自ら伝えようとはしません。
 もしもダイ・グが「肩の調子が悪いんだけども一体何が原因だと思う?」とでも聞いてくれれば、せめて最低限……例えばクープのところに行ったほうがいいとか説明して、たとえほんの僅かでも、少し打開策が彼に開けるのですが…
 でもそんなアクションが向こうからない限り、ファティマは自らそれをしないのです。「主人に言われたから服を着せるのは手伝ってあげても、そこで何か気がついたとしても自分からは言わない。それはファティマと騎士の主従関係の範疇ではないから」なのです。
 これは以前私が書いたコラム「多分、政治的なもの。その2」からこちらを御覧ください。殆どのファティマは戦闘で生き残ること以外は、そんな立場なのです。
 単行本14巻のファティマ・京も…彼女のアシリアスーツ設定画の説明を読むとうっすら読者に伝わってくるのですが、ベラ国攻防戦はあんな形で戦闘が終わりましたけども、これは「主人のブラフォードが彼女の出しゃばり(否定的表現になってしまいますが、すみませんここではあえてこう書きます)に気が付かなかった、もしくは受け入れるだけの人間としての度量があったから成り立った。アイシャは見逃したけど自分のファティマが同じことをしたらどうだったかは分からない」と言っているのともほぼ同様だと思っています。
 ※そういう意味では14巻一番の出しゃばり^^;はオーハイネなのですけども、彼女は見事にけしかけて危機一髪というスレスレのことをしでかしてLDIを目立たたせ、アマテラスに気に入られたという大仕事を果たしましたよね。(しかもLDIはアマテラスにやられて、すっかりそのこと…大失敗のきっかけは忘れているとみた)私個人は、彼女のあの行動は詩女に同じ名前の人物がいるし、何かしら大掛かりなしかけがあるのではないかと見ていますけども…

 戦闘ですら、ファティマは主人の要望に答えるのと、互いの生存を目指すのがメインの仕事であって、「キャッチボールは主人が投げたもの(要望)を返す」ことしかしないのがファティマです。彼女たちが投げ返すボールが的確、あるいはどんなに見事なものであってもです。
 ましてや戦闘以外のところでは、本当に…頭脳があんなに優秀でも、人間に寄り添って生きるのは不可能に近いものがありますね。(それは後天的な理由、人間が決めたルールのせいでもあり、またもしもそんなものがなくて自由であっても、殆どの人間よりも優秀なのに性格として大人しい彼女たちに従うような賢さは、人類にはまず備わっていないと思います。)
 だからチャンダナも…これから彼女、辛い場面にいくつも遭遇するかもしれない、でも今後も、物語の一端がどうなるのか予測できたり、その場ではどうにか立て直すチャンスがあったとしても、ダイ・グから要請がない限り基本的には無力なまま。
 しかももともと彼女会話とかも中々しないから^^;今後もずっと傍観者にならざるを得ないのだと思います。
 せめて戦闘のとき、せめて一回くらいは、今後起こりうるダイ・グが引き起こすミス(筋肉が動かなくなってしまうというのは戦闘においては致命的なエラーになりうるから)に対してこっそりフォローを入れてほしいなとでも願うしかないのでしょうか……。

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