魔性とスタック・コード。(2016年作)

 2016年ニュータイプ8月号(ファイブスター物語14巻部分)でファティマ・ビルドがワンダン・ハレーの元へと無事嫁いでいかれましたが、ここで悲劇に見舞われ頑なになっていたハレーの気持ちを変えさせたのは後輩としてのナルミ・アイデルマの厳しいお言葉。
  ビルドはずっと以前から、何十年も彼のもとに行きたいと心を決めていたものの、この叱咤を受けている間は一度は戸惑ったりもしたような感じすらしました。
 しかしナルミのメッセージにかつての自分の連れ、インタシティを見出し導かれるようにハレーは率直な思いをビルドに口にし、その気持ちに思いが溢れ出し、彼女は涙を流しつつ決意しました。
 結局のところ二人の女性に崩れかかった人生を立て直してもらったハレーですけども…あれかな、キャナリア・アイデルマ(魔導大戦後、バランシェ・ファティマ、カナハを連れ聖宮ラーンの隊長となる女性…ラーンの支隊長は詩女守護の都合上女性みたいだから。)の父はハレーで、でも彼はナルミとは結婚したりせずにビルドと生涯を共にするのかしら。
 いきなり蛇足ですけども(だから根拠は全くありません(;^_^A)

  このビルドの行動に限ったことではなく、モラード・ファティマは皆さん、彼女のお父さん(と私は勝手に呼んでいる)であるモラード・カーバイトにとてもよく似ていますよね。
 お父さんも含めて、彼女たちはどうも人間の素直な性格、あるいは真っすぐな思いに非常に弱い。
 あれだけシステム・カリギュラを心底嫌っていたモラードが、LDI20の恋心にその人らしさを見出し、自分の抱えている秘密を告白してしまうように。
  直接のパートナーですらきちんと選べない彼の処女作、エストとなると「私は大好きな人間のためなら何でもします」(FSSトレーサー1参照)という事らしく、私としてはうーーん、それって仏様ですか?みたいな心境になるのですが、彼女ですらバーシャの時はヨーンの懸命さに心打たれ、持てる能力を惜しみなく彼につぎ込んだ。
 ウリクルがコーラス3に大けがを負わせる原因を作っておきながら笑って許してくれた事で人生を決めてしまったのも、ポーターが死の寸前に、どこの誰かも謎な、訳のわからない提案に乗ってきたのも、正直、騎士の能力とはあんまり関係ないような決め手のような気がします。(いや、彼女たちも勿論ファティマですから仕えるという選択肢となれば精密なフィルタリングをして騎士たちを見ているとは思いますよ。でもそれを超えてしまう何かに委ねてしまうような感覚と云ったほうが良いでしょうか。)
 その結果・・・彼女たちは短命であったり非情な運命を辿りがちなのですが、その一方で人間の資質もよく見ているため、騎士のパートナーとしてより寄り添いやすくなり・・・そりゃ魔性とか言われても仕方ないかな(;^_^A
 でもこれはモラード・ファティマを得たことのない者の人間側の(勝手な)意見でしかないですよね。
  となると、39人いるというモラードさんのファティマたち・・・ まだ出てきてないところだとアード・ゼニヤッタとヒン・モンダッタのカプリコーンとエベレスト、緑色の髪のあのひと、アーリィ・ブラストのマルターも・・・ファティマ側からの逆視点から考えればここの人たちも「お父さん譲りの視点で選ばれるくらい素直な性格の主人」である可能性は結構高いし、実際3人の物語の様子や設定画としてもそう取れるように思います。

  これは私個人の勝手な印象ですけども、ファティマって「あんなに自身の人生をがんじがらめに縛り、大多数の人間を大いに凌駕する頭脳と能力を一番使いたくない殺人行為にしか持ち得ない・・・人間の起こした戦争の中でしか生きられないファティマが人間のことを好きになるはずがない。騎士に仕えるのは生きるためだからだ」という思いを彼女たちに抱いているところがあるのですが、モラードさんたちのお嬢さんはそれでも何か騎士の中にある…人としての美点というか、真っすぐなところを、その限られた情報の中でも選考要素に加えているように思います。
  ビルドもハレーを見出したのにはそんな視点も加わっていて、だから彼が騎士廃業していてもずっと待っていたし、最終的には彼の人間性に改めて惚れ直したといったところではないでしょうか。
 それが例え、ガーランドたちにとっては「スタック・コード」と片付けられようとも…。
 というか、人間にも気が付かないだけで、実際には存在するのではないですか?スタック・コード。
 ※ただミースも語っているように、人間はファティマに勝てませんからね(;^_^A あんまりファティマがヒトの人生に寄り添っていると、その人物は人として成長する代わりに子孫ができない可能性が増え、素晴らしい人材が枯渇する危険性は確かにありますが・・・まぁそうならないように世界やシステムが出来ているのも、人間ドラマを豊富に描いているファイブスター物語ならでは、ですね。

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