個のないひと。(2017年作)

(20203/29 前置き。
 新型コロナウィルスの影響で外出もなんだかためらわれるこの頃、家でのほんのちょっとの暇つぶしにでもなるかな、と突然こちらを置いておくことにします。
 「個のないひと。」は2017年に作った配布物”Fughetta2 Private Goes Public.”からの未発表FSSコラムになります。(ツラック隊のエピソード連載最中です)
 Twitterでの#FSS騎士総選挙 にてコーラス3へ投票してくださった方へのささやかな御礼でもあります。とはいえ締め切りまでまだ2日あるので気の向いた方は良かったら、本命ついでで全くOKですので、もしもお時間あったら彼に投票して頂けたら嬉しいです(オイ)
 当時こんな表紙の配布物にしていました。このデザインは理由があってわざとこういったモチーフにしています。理由はお読みいただけるとわかるかも知れません^^;
 尚、この冊子は2つのFSSコラムで構成されていました。もう一つのコラムは非公開にしております。(タイトルだけはFSSコラムの分類目次に記してあります。

個のないひと。(2017年作)

というわけで、突然
 いきなりですが…DESIGNS5でえらく様変わりした学生時代を送っていたことが発覚したエルメラ・フロンドゥさんが出版物の中で異彩を放っておりました。
 私はブログ”絶対秘密。”にて書いたもののひとつ”Google+FSS塾での、とある方へのお返事”の中で、わかりやすさの為なのか遠回しのためなのか、おそらく両方の事由でこういったことを記しています。
(一部引用。全文は https://zettaihimitu.blogspot.jp/2017/02/googlefss.html でどうぞ。)
 ~しかし、古くに描かれ、長い時間私がとても大切にしていた物語が、既に完成しているお話の土台まで突き崩されて変えられていっている。
一度はグッとこらえ考え直したことではあるのですが、もう世界外観が変わってから桃太郎の話に関してだけ、3回もこうされている。(2度めはDESIGNS5のブロンドウさんの記述がそうです。)~
 連載再開後なんだか唐突とも言える感じで3巻のコーラス6とディジナ・マイスナーのエピソードが没になり(連載再開後の年表ではまだ出会っていないことになっているのと、この二人が出会う前にジ・エンドレスとクローソーが発見されているため)そして漫画では殆ど登場してきてない(3巻の酒席でボード・ビュラードに話をしていた女性騎士という話もあるようですが…)2989年ハグーダ戦でのトリオ騎士団長でエルメラの友人、アイリーン・ジョルが登場してきたりしていますが、この2つに関しては自分も言うだけのことはブログで語りましたのであとはその後の物語の展開を待つしかないと思っています。
 …しかし引用にあたるところの”2番めに当たる部分”については、まだ触れていなかったように思います。DESIGNS5は日本橋三越の宮越屋珈琲で衝撃のビジュアルを目撃しアイスコーヒーを吹きそうになりそうになったものの、”ふーーーん…”となりました。
 これだけでは分かりませんね。永野先生、読者が爆笑するような斜め上の展開を持ってきておいて、実は別の意味合いをこの二枚の絵に忍ばせてきたな、と読んだ直後に物語の変化を目にした気分になりましたが、それを即座にブログに記すのはどうか、ただでさえコーラス王朝色が強いのに、これ以上色合いを強めるのは読み手にとっても嫌かなと、その時は素通りしてしまいました。
 この冊子をお求めの方は、多分”かなり奇特な読者様”(失礼。同時に大変ありがたいと思っております。)だと考えられるので、だったらこの機会に書いてみようと思います。

 確か2巻の時点では大学生だったはずのコーラス3とエルメラさん、ずっと好きだったのよ。マスターは愛する人の言葉ではないでしょうと彼女はクローソーに、色々な憎しみを交えて告白していますが…
 あ、あのですね…
「ど、どこが好きだったのですか?」
「あ、あとあの方はどう呼ばれても同じだったのでは…」
 ということを昔から思っておりました^^;

 というのも、コーラス3、名前がないんです。
 (昔は3巻、出陣式のときのシーンに小さくコーラス・サード・ビベライヤー?と城の床に書かれていてこれが彼の名前なのかなぁと思っていたのですが分からずじまい。)
 そうしているうちにDESIGNS2で名前があるコーラス王は二人だけになってしまいました。
 ・19世”ディス・バイス”…恐らく聖宮ラーン東宮西宮の乱のときにラーン聖導学院の学生だったことによる偽名から。
 ・26世”リューベル・ジュード(ラベル・ジューダ)”これも生後AKDの侵攻から逃れた後の偽名ですね。括弧付きの名前の方がメジャーのはずですが、リブート5の表記にしてみました。彼は騎士である前に科学者としてディジナと出会うことになると思われます。
 あとのコーラス王は幼名とかあるのかという気配すらない。(諸事情あるのかコーラス19の息子にはテノールという名前がついていますが、即位前に事故死しています)しかもサードとかフォースとか、十の桁まで更に略されて(彼らは本来23世であり24世である)呼ばれたりでこれも愛称ににしか過ぎませんし、大抵の人間にとっては”コーラス+殿下→陛下”コースではないかと思うのですが…
 私は自分の名前を生まれたときから持っていますから名前のない人物の面持ちなんて分かりようがないのですが、こういう人って、陛下と呼ばれようがマスターと言われようがおんなじなのではないかという気分になったことはあります。フィルモア帝国の上層にいる人間が幼名で成人するまでその人物が守られ、身分などを隠されているのとは対照的です。
 つまりコーラスの王子は「生まれたときから将来の国王」として世間一般に一挙一動を注目されるような存在なのです。一番近いのは日本の皇室や英王室なのかもですが、もっと厳しい縛りだと思います。彼には名前すら与えられないのですから。

 ずっと好きだったというエルメラさん、でもなぁ…あのひと、生まれたときからの(コーラス王朝民にとっての)スターみたいな存在である一方、あの性格だよ?王朝の跡取りであることもしくは面立ちが割りとハンサムなこと(あるいは両方)に目がくらんだのかな…というのは意地悪い感じがしますが…というのも若い時の彼って…
・内容を良く確認していない(この後もそうだけど色々不注意だよね)
・サンドイッチあんな食べ方!
・1人でブツブツ喋ってる。物や人でないものにも話しかけてる
 2巻45p(リブート2の方は29p)の描写がコーラスの性格的な総てではないかと思い、その「地を」好きになるとは(世の女性、ましてや美人ならば)あんまり思えないのです。勿論他所では違う態度を取っているかも知れませんし、そういった描写はゴティックメードのトリハロン皇子でも見られましたけども、彼は地も大変しっかりしていたからなぁ…^^;
 しかしこのあと、世に誕生したばかりのファティマ・ウリクルにつけられ追い掛け回されることになるのですが、頭のいいファティマがましてや生まれてはじめて外に出てしかも父の客人を迎えに行くのにあんな茶化す態度を取ってきたということは、彼女、この29pの様子を一部でも見ていたのではないでしょうか。

 極端な描写をすれば「何この人、ばっかじゃないの~」とでも書きたくなるような…あ、こう書くとディジナさんっぽいですね^^;
 後のことは略しますが、ウリクルは彼の優しさ(&ある意味素直さ。彼女を笑って許したのはウリクルの悪戯ががどうのこうのというよりも、死の淵で”恥ずかしい”と反省したことが全てだったのでしょう。)にほだされそのままついて行ってしまいます。
 そしてここからDESIGNS5に戻ります…ここでのエルメラさん、単に見た目がスケバン(?)から恋する乙女になっただけでなくて…
 エルメラさんは不良の時はコーラス3には眼中もありませんが(流石に存在を知らないわけはない。しかも同じ学校だし)途中留学して帰ってきた彼に声をかけられて夢見る少女になってしまう。しかしそのときには既にウリクルが彼の側におり、「ファティマによる大幅補正」がコーラス3にかけられ(1巻のような)何だか格好良い態度になっていた。だからエルメラさんはウリクルの真似をして足元をレースソックスとサンダルにしているのだ。
 …という変更がなされているように思います。
「ファティマによる大幅補正」というのは、ブログ”多分、政治的なものその2-3。空白と逸脱が連れていく物語” https://zettaihimitu.blogspot.jp/2015/07/2-3.html でも触れた要素です。一部引用します。
~彼が好きなはずなのにその仕打ちから憎さ百倍の感情を王とファティマに抱いてしまったエルメラ王妃ですら認めざるを得ないところの”王としても偉大”。
この部分は彼個人の精神的な充足も含めて恐らくウリクルが全て支えている。彼女がいなかったら”形としては大国の国王だけども…”と影で言われていたのではないだろうか。~

 コーラス個人にとっては短い人生であっても幸運だったことと思います。常に人々…自国だけでなく星団中からの好奇と羨望と色々な眼差しで見つめられ幼い頃から生きていかなければならなかった「名前すら存在しない、個のない人。」にとってはこれ以上ない支えであったと思います。誰が一体本心で言ってくれるのか良くわからない儀礼の世界で生きてきてきたようなものでもあるのでしょうから。
 そして「ファテイマ・プロデュース」によって何だか格好良くなって帰ってきてしまった彼に(いい匂い云々はよくわからないけど、声かけられた時はまだ不良だったはずなので、焼肉の匂いでもさせてたんじゃないかと邪推^^;)舞い上がって変貌するエルメラさん。申し訳ないけどこれまた上辺が変わっただけだし「いつでも人前状態の猫かぶり」と「彼のために猫かぶり」でご夫婦ならばそれでは…仲が良いわけないよね^^;

 …ちょっと話を変えます^^;
 ジュノーンに乗り込んで負傷し、ウリクルに自分を放ってジュノーンの為に救援を頼んでいる時に、「マスターは国王です!」と注意される一幕がありますが、それを聞いて苦笑いを浮かべてるコーラス、きっと彼女には様々な場面でもう何百回も同じようにたしなめられていたのではないかと思います。
 そうそう人の性格は変えられないもので、彼は「立派な国王陛下」になってもジュノーンに親しみを込め話しかけていますし、ウリクルの前では何だか坊っちゃんっぽさが態度から抜けていません。
 しかしそんな関係を改めて思い直し、最近私はこのふたりがどうも「ドラえもんとのび太くん」の関係性に良く似ているのではないかという気がしております^^;
 いやある意味ドラえもんよりももっと強力かしら?ドラえもんにしずかちゃんが加わったようでもあるような…
 のび太くんも優しいけどなんだか色々駄目で、未来も危うい。その補正に22世紀の子孫から派遣されてきたのがドラえもんです。ウリクルはドラえもんのようなひみつ道具は出せませんが、ファティマのあの物凄い頭脳が1人の人間に全面的に味方している。
 その結果誕生したのが「きれいなジャイアン」…じゃない、誰もが颯爽としていると認める超大国の武帝コーラス23世であり、アイドルではないけどもそんな彼だったらエルメラさんじゃなくても周りの女の子はキャーキャー言っていたかもしれない。(だけども彼女が王妃になったのはあの友人を含むヤンキーパワーなのかも知れませんね^^;)しかし彼の優しいけども鷹揚な性格は全くと言っていいほど変わっておらず、ウリクルの前だけはその個人的な顔を露出させている。ロボットや剣にも人のように話しかけるあの感性が。
 そんな、コーラス3とウリクルとの間に存在している「かなり個人的な間柄」は生存するためのルールを人類にがんじがらめにした上、もしもそんなものがなくてもあまりに人間を凌駕する存在である普通のファティマと騎士の関係性ではあり得ないことなのです。
 どうして人類を超越する能力を持つファティマが(自分達より基本劣ってる)ヒトなんかを好きにならなければならないの?という、AFが機械ではなく生きている存在としての謎と面白さ、ヒュードラー博士言う所の兵器としての不完全性が浮き彫りになりつつ、こういったドラマは色々面倒でしかも人間キャラクターに与える影響力が馬鹿でかいため、今後永野先生はそういった所は殆ど可能性のない話として物語には描かないだろうなぁと思います…。
※注意。騎士もファティマ達を生み出しているガーランドも、才能云々の幅はあれども元々遺伝子の抽選で選ばれた様な”偶然の超人”であることを忘れてはいけないと思います。
(唯一若干だけこういったドラマを予感させるのは、ビルドかな…神様の気まぐれにに導かれるようにナルミと亡きインタシティと三人の女性に転機をもたらされたワンダン・ハレーはこの先いったいどんな人生送るのかしら?)

 そして彼らの短い人生は以前からも書いているようにファティマ・クローソーの出会い、クローソーを通した神様天照との出会い、コーラスのためにとずっと作り続けていた”ジ・エンドレス”への改造と繋がっていきます。しかし物語の連載再開後の動きで、この「コーラスの守り神」はどういうわけか今後聖宮ラーンに移動します。 
 そこから逆算して最近思うのですが…どうも”2番めの詩女”のスジタス・ボォス。(13巻でもクリスの前に表れている前髪を切り揃えた方です)彼女は最も政治的な動きをした詩女であり、都ハ・リがベリンの名を取った聖宮ラーンとなったのと同時期に星の名前がカーマインからボォスになっているのですけども、彼女の顔を見ているとどうもウリクルを連想してしまい…。ひょっとして、ウリクルって過去からの使者か??なんていうのはドラえもんからオーバーラップさせすぎなのですが^^;
 でもジ・エンドレスがラーンに来ることで3199のAKD大侵攻からラーンを護ることになるのも事実なので、このあたりの関連は(超いい加減ですが)気になっております・・・果たしてウリクルはドラえもんなのでしょうか(だから違う!)

 その答えは彼女からではなく、まず詩女と同じ名前とウェーブ金髪を持つLDI20 所有のファティマ・オーハイネが、そのヒントになってくると思います。
 彼女は現在連載中のツラック隊のエピソードにおいておちゃめなことを仕出かしてLDIを窮地に陥れるらしいのですが、システム・カリギュラの一員で永い時を生きてきた彼女が、色々なものに導かれ、やがてミラージュ騎士団入りし物語の果て、7777年まで天照にお付き合いすることになるLDI20。
 オーハイネ自身は知ってか知らずかは分かりませんが、運命の舵取りはやっぱり「ファティマの茶目っ気」(モラード・カーバイト談)が握っているのでしょうか…

※余談。表紙と裏表紙の絵は、コーラスとウリクルをドラえもんとのび太くんのあの…「ドラえも~ん」と泣きつくあれを再現しようとしてなんだか妙な感じになってしまったものです^^;
 大変ごめんなさい^^;
 だからあんな色合いなんです。コーラスの緑と白とは全く関係のない…。

おしまい



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