星降りの夜(5)

「・・・もうすぐ戦争が起きてしまうかもしれない。」
一瞬は笑いに包まれたふたりだったけれども、重いコーラスの一言が、現実へと引き寄せた。
それはウリクルもつぶさに彼から、あるいは他の者からも聞き知る最悪の選択だった。
「なんとしても避けたいしこちらもそうなるように日々努めている。でも─」
「何だってこちらの願いには耳を貸さないんだ、あいつら。そんなに領土が欲しいのか。」
怒気を秘めた声、しかし悲痛な面持ちの彼の瞳が一瞬潤んだのを、ウリクルは見逃さなかった。
「マスター・・・」
ウリクルはコーラスの戦闘時のパートナーである。しかし、戦争が起きてしまうことを望んでいるわけでは、決して、間違っても、絶対になかった。
彼女の白いグローブに包まれた右手は、彼の手の中にある。
ウリクルはその手を組み直して、想いが彼のそばにあることを訴えるように、ギュッと力をこめ、握り締めた。
しかし他に何かないだろうか、マスターが安心してくれるよう何かが。
・・・あった。

「マスター、また星に願いをかけてみましょうよ。」
顔を上げてコーラスの顔を直視しながら投げかけたウリクルのことばは、ついさっきまでその話をしていたのに、自分が思い出さなかったからか、それとも人工生命体の彼女にとって迷信の類と思わなかったのを意外に感じたのか、何か拍子抜けした様子で彼女のアメジストの瞳を見つめ返したのだった。

ウリクルとコーラスが再び真剣になって、夜空の流れ星がどこかにないか、瞬く星の海をくまなく探し出そうとしていた。そうしている間にウリクルはあることを思い出したのだった。
「マスター、聞いても良いですか。」
「なんだい、ウリクル。」
眼は夜空の星を追ったまま、コーラスはウリクルに応えた。
「前こうやって流れ星を探して見つけて・・・あの時マスターはご自身の願い事を教えてくださらなかったじゃないですか。もう良いと思うのですが。あの時のお願いは何だったのですか?」
「ん?ああ、あの時の・・・」
相変わらずコーラスは星を探し続けている。というか、彼はどこか上の空のようにウリクルにも思えた。
「ナイショ。」
一言ボソリと話した彼の言葉は、またしてもウリクルを煙に巻くもの・・・
「ええ?まだ内緒なのですか。どうしても教えてくださらないのですか。」
コーラスは不満げなウリクルの顔を一瞬だけ直視して、しかしまた夜空を見上げ、頭を掻きながら少しだけぶっきらぼうにこう返事をするのだった。
「僕の願いはね、叶ったよ。」
そしてさらに言葉を続けようとした時、二人の視線の向こうに、幾重もの流れ星が夜空を彩りだしたのだった。
「ほら、見て!」コーラスの声がいつになく弾んだものに感じられた。
それも無理もない、ウリクルもコーラスも、それははじめて見る流星群のきらめきだったのだから。

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