星降りの夜(2)

「マスター、夜中にこんなところで何をしているんですか?」
ウリクルが植え込みを回りこんでコーラスの元へ近寄っている間も、彼は一心に上を見つめていたように思えた。
「この通り。夜空の星を見ていたんだよ。」
彼はちょっと咎められそうなのを気にかけたような含んだ声で、ウリクルに微笑みかけた。
コーラスが夜、何も告げずに一人で出かけてしまうなんて珍しく、ウリクルはつい不安になってあちこち探し回ったものの、発見したらしたで彼のあまりに飄々とした風情に、なんだかほんのちょっとだけ・・・本当に少しだけ、だけども心配をして損をしたような気分にもさせられたのだった。
コーラスは何も言えず仕舞いのウリクルに、少しだけ申し訳ないとも思ったのか、言葉を続けた。
「さっきエストに教えてもらったんだよ。今日が"星降りの夜"だってね。」
「星降りの夜・・・それは何なのですか?」
ウリクルは今まで聞いたことがなかった言葉を耳にして驚き、彼女のマスターは、・・・彼もつい少し前にそのことを知ったばかりだというのに、"もの知りの"ウリクルでも知らない事項があるんだ、と意外な顔を見せるのだった。

「なんでもこの星に古くから伝わる言い伝えらしくてね、引き裂かれて離れ離れになった恋人たちが、・・・一方がしかも亡くなってしまって、あまりに愛しくて置いていってしまったヒトの事が気になるから、この日の夜だけ、流れ星を介して相手にメッセージを送るんだって。」
「それで、この日に流れ星を見つけたら、それに思いをこめると、願いが叶うらしいよ。」
ウリクルは、その御伽噺のような説話を黙って耳を傾けていたけれども、彼の口からそんなロマンスめいた事を聞かされるとは思わなかったので、どう切り返して良いのか悩んでしまった。
それでも何か言わなくては、と思いひとこと彼に尋ねてみた。
「・・・それで、マスターは流れ星、見つけられたのですか?」
「いや、それがまだ・・・」
彼はウリクルから、再び漆黒の夜空に視線を移し、少し慌てた様子で何かを捜し求めるのだった。

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