~へっぽこからのお知らせ~

◯配布物Fughetta.シリーズ3冊について。バックナンバーに関してはお申込みを締め切らせていただきました。今迄お申し込み頂いた皆様どうもありがとうございました。
最新号3に限り、年末まで郵送も受け付けます。お問い合わせフォームにてご住所、お名前、お誕生日(要年齢確認のため)お知らせくだささい。
※尚配布物に記載したコラムについてはブログ公開予定はございませんのでよろしくお願いいたします。

ささやかな最大権力(3)

ウリクルに置いて行かれた形になってしまったハミルがコーラスの部屋へ戻ってくると、彼女は入れ違いに、反対方向へ慌しく場を去るのが見えたのだった。
そしてまた暫くすると、彼女はコーラスの部屋に戻ってきた。─その両手には、欅で出来たお盆を持ち、お茶の用意だと思われる一式と共に。
「ハミル様、先程はすみませんでした。」
ハミルの姿を視界に見つけると、ウリクルは両手がふさがったまま彼の目の前まで駆け寄り、少し前の非礼を詫びるのだった。
一体これから陛下の部屋で何が起きるのか予想が出来なかったハミルは、ウリクルにせめてヒントでも貰えないかという気分で、彼女に尋ねてみる事にした。
「あの・・・陛下は何と?」
「・・・それが、よく分かりません。」
ウリクルは何も伝えられず申し訳ないように、ハミルに小声で打ち明けるのだった。
「陛下は、最中が届いているだろうからお茶と一緒に持ってきて欲しい、とだけ。私も気になりますが。」
彼女の語り口や表情も明らかに戸惑いを隠せないように、ハミルには思えた。
「では、行ってきます。すみませんが、そちらの警備をお願いしますね。」
ウリクルはそのままハミルに一礼すると、彼に襖を開けてもらって、広大な部屋の中へ消えていくのだった。

─さてここから暫くは、誰もこの部屋に通してはならないのだけど・・・
これからの職務に緊張含みのハミルは、何事もないように願いつつ、ウリクルが発したある言葉が気になっていた。
・・・最中??


「マスター、お届けものは確かにありましたので、お茶と一緒にお持ちしましたけれど。」
ウリクルの視線の先には、手持ち無沙汰そうに、あるいは少し行儀悪そうに座卓に両肘を突いて待つコーラスの姿がそこにあった。
「おっ、来た来た。やっと会えたよ。」
コーラスはウリクルとお盆に載せられた物を確認すると、目尻を下げて微笑み、弾んだ口調と共に言葉を続けた。
「実はその最中、今朝頼んで買ってきてもらったんだ。美味しいんだよ。」
「ウリクル、一緒に食べようよ。」

「・・・へっ?」
茶さじで葉を急須に入れようとしていたウリクルは、思わず驚愕の2文字を顔に書いて、向かいの主人の顔を注視せざるを得なかった。
彼女から見たコーラスの表情は、いつになくニコニコしている・・・というよりもむしろ浮き足立っている様にすら思える。
(マスターは、お茶の為だけに人を使い、仕事を止めさせて私をここへ呼んだの?)
ウリクルはコーラスからの呼び出しを受けて、一体何の重大案件なのかと、短い時間しかなくともずっと思いを巡らせていた。それこそ彼の言葉を聞くまでは。
しかし、真っ先に頭に思い浮かんだけれども、まさか、あり得ない。むしろあってはならない。と感じて放棄した答えが、正解になってしまいそうだった。
・・・あってはならないのだ。私たちの間には。

「外が凄く気持ち良いから、あっちで頂こうか。」
何故だかよく分からないけれどもすっかり上機嫌のコーラスは、視線を飾り窓の向こうの濡れ縁に移してから、ウリクルの方に向き直った。
けれども彼の眼差しに飛び込んできたのは、沈んだ表情で、うつむいてお茶を煎れている彼女の姿。
その様子を目の当たりにした彼は、ウリクルの顔を覗き込みつつも、声は戸惑いのトーンを帯びたものに変化していくのだった。
「・・・一体、どうしたの?」
 

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