降り積もる祝福(5)

「・・・あの時は祝福とプレッシャーとが両方、自分に降りかかってきている様な気分だったよ。何か全てに応えなければならない、という期待が。やらなくてはならないと、わかっていた事ではあったけれど、ちょっと不安だった。」
僕は言葉を続けた。
「今それがちゃんと出来ているとはそんなに思わないけど、それでも王様、何とかこなしている方かな?ウリクル。」
かつて、もっと若かった時の僕が、騎士としての腕前が向上しているか彼女に尋ねたように、また似たような質問を投げかけてみた。ウリクルから、どんな答えが返ってくるのかも興味深かった。
ただ今回の質問は、少し彼女を困らせてしまったみたいで、せっかく顔を上げていたのに、またうつむいて手を頬に添え、暫く考え込んでしまったみたいだった。
この反応はこちらも予想外だったので、少々僕も慌てそうになった。

それでも彼女はまた、ゆっくり顔を上げて、僕の顔を真っ直ぐに見つめてこの問いに答えてくれた。
「・・・この質問に正解はないでしょう。でも、マスターの真似は、誰ができるものでもないと思います。誰かが代わりを務めろ、ということになっても、うわべをなぞるだけでもそうそう困難ではないかと。」
「それって、褒めてくれているのかな?多少は。」
ウリクルの、分析みたいだけど少々回りくどい答えに、ちょっと思っているものとは違っていたな、と感じてしまったりもした。もっと率直に言ってくれるのかと考えていたのだけど。
しかし、彼女が次に紡ぎ出した言葉が、別の意味で僕を慌てさせた。
「でも完璧ではありませんよ、マスター。それは、こうして私と会っているからです。」
ウリクルは笑ってこの言葉を投げかけたので、これは彼女なりの自分への冗談なのかもしれないけれど、あまりに直球過ぎて、僕はぐぅの音も出なかったのだった・・・。

「今もきっと、マスターの、私の両肩に、見えない紙吹雪がふり続いているのかも知れませんね。」
「そうかも知れないね。・・・ウリクルにも、迷惑かけっぱなしだね。」
「いいえ。またマスターのお顔に貼りついたら、取ってあげますよ。」
彼女があの時みたいに、腕を伸ばして、手を僕の頬へ向けるような仕草をした。
その柔らかい微笑と、話題が紙吹雪の事に戻った事に安堵しつつ、僕は空いた手ですかさず彼女の細くて小さな手を掴んだ。
そして、間をおかず僕は続けた。─話の矛先を微妙に変えて。

「でも今、僕が降らせられるのは─」
次の瞬間、ウリクルの薔薇色に染まった頬と、アメジストの曇った瞳から、本来の彼女が持つ、孔雀色の虹彩が見えたような気がした。顔を近づけすぎて、戸惑いを伴っている様にも思えたけれど。
でも僕は構わず続けた。
取り合った手は彼女が握り返してくれている。そのこもった力に喜びを感じながら。
「・・・君への祝福だけ、だよ。」
そしてそのまま、何回も何十回も、繰り返し、君にキスをした。





「・・・マスター。」
「ん・・・何?」
「・・・溶けそう。」
「!?君が溶けちゃったら、困るよ。」
「・・・それでも、いいかも。融けてしまっても。」





「・・・・・」
「・・・フフフ。」


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