降り積もる祝福(3)

幸い、僕が途中で言葉を切った事を気付かなかったのか、それとも気づかないふりをしてくれたのか、ウリクルは僕の顔に視線を向け、手を伸ばして、自分の頬についていたらしい紙吹雪の一枚らしきものを取り除いてくれた。
「マスター、ついてしまいましたよ。紙吹雪。」取り除いたその金色の一枚を再び空間に放ち、君は微笑んだ。
しかし、すぐにそれは憂鬱を含んだような表情に変わり、僕に囁きかけた。
「13億人が、私たちを常に見ているということですね。」
「そういう事だね。それも大いに活躍を望まれて。この国が未来永劫続く事と信じられてね。」
そんな事は到底ありえない。でも幻想を抱かせつつ人が一生を生きられるようにしなくてはならないのが、僕の役割なのかもしれない─

ウリクルが手を伸ばして、紙吹雪の何枚かをその手に受け止めようとした。
はらりと彼女の手のひらにこぼれた紙切れは、しかし次の瞬間、そよ風に揺らされてまた何処かへと飛んでいってしまうのだ。
「私達は・・・裏切れませんよね。期待を。この祝福を。」
「この紙吹雪よりももっともっと沢山の方が、マスターを信じて動くんです。私も、変な事は出来ませんね。」
ウリクルがそんな事をするとは到底思えないのに、冗談めいた風に〆ると、君ははにかんで笑った。
そして顔を僕からテラスの国民に向き直し、また歓声のする方へと手を振った。
風が少し強くなって紙吹雪が上から下から巻き上がりだし、それで自身の姿をもかき消してしまうかも知れないのに。

降り積もる祝福は、午後の陽射しを受けて時折きらめきを反射しつつ、ウリクルに、そして自分にふりかかる。
そして僕も、彼女のしている事と同じ動作を、テラスの、テレビカメラの向こうの国民に向かって繰り返すのだった・・・。

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